生成AIで「戦略コンサル」は淘汰されるか?

声優の緒方恵美さんが、生成AIによる音声の無断利用に警鐘を鳴らしていました。

「本人が知らぬ間に卑猥なセリフをしゃべらされることも…」
「若手を育てる場も、声優としての仕事も奪われかねない」

(引用:デイリー新潮の記事はこちら

AIが本人の声を再現し、知らないうちに使われてしまう。

この手の話は、クリエイター業界だけの話ではありません。
私たち中小企業診断士の世界にも、同じような課題が見え隠れしています。
AIが進化するほど、「知識」や「分析」といった“形のある知的労働”は、代替の対象になっていくからです。


AIが得意なのは「型にはめる戦略」

生成AIは、過去の成功パターンを整理し、最も合理的な答えを導き出すことが得意です。
SWOT分析や3C分析、PEST分析といった構造的なフレームワークは、まさにAIの得意分野です。

企業情報や財務データを入力すれば、外部環境の整理から戦略提案まで数秒で生成してくれます。
これまで診断士が時間をかけて作っていた「整った戦略書」は、今やAIでも十分作成できる時代になりました。

つまり、「型に当てはめて考える」仕事は、AIによって効率化される領域に入ってきています。


経営者の「迷い」に寄り添うのは人間だけ

一方で、AIがどうしても踏み込めない領域があります。
それは、経営者の感情や覚悟に寄り添うことです。

数字上は撤退が合理的でも、経営者が「社員の生活を守りたい」「創業者の想いをつなぎたい」と考えることがあります。
その判断は、論理では説明しきれない”ドラマ”や“物語”があるためです。

診断士の役割は、そうした葛藤を理解し、一緒に考えながら進むことだと思います。
きれいなロジックではなく、経営者の心の奥にある思いをどう形にしていくか。
この“人間臭い支援”こそ、AIには決して真似できません。


AIを「壁打ち」に使い、人が決める

最近、テレビである経営者が、AIを「経営の壁打ち相手」として活用している様子を見ました。
AIに質問を投げかけることで、自分の考えを整理し、意思決定の精度を高めていく。
最終的な判断は人間が下す。

この姿勢を見て、AIは敵でも味方でもなく、使い方次第の道具だと改めて感じました。
AIに丸投げすれば、人の思考は鈍ります。
けれど、AIをうまく活用すれば、考える時間を生み出し、より深い対話に集中できます。

中小企業診断士の仕事も同じです。
AIに情報整理を任せることで、私たちは経営者との対話や、意思決定の背景にある「想い」を掘り下げる時間を増やせます。
大事なのは、AIをどう使い、どこで人が責任を持つか。そのバランスだと思います。


まとめ:AI時代にこそ、人間の温度が価値になる

緒方恵美さんの発言は、専門職の存在意義を問い直すものでした。
AIに奪われるのは、知識や手法といった形式的な部分です。
しかし、経営者と心を通わせ、覚悟や信念に寄り添う診断士の仕事は、人間にしかできません。

AIが進化すればするほど、「人の温度」を感じる支援の価値が高まります。
中小企業診断士に求められるのは、正しさを説くことではなく、経営者と共に悩み、共に歩む力だと思います。